話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

 毎年楽しみに見ていたブログ企画に参加してみることにした。

配信スケジュール等の関係で今期のアニメに関しては全話見れていない作品も多いのであくまで暫定的な結果として残しておく。

・2018年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。   

 上記ルールに則って記述していく。

 

  

スロウスタート 6話 「うなぎのぬるぬる」

slow-start.com

主人公である一ノ瀬花名が友達や周りの人々との交流を経るうちに中学浪人という過去のトラウマ、マイノリティであることへのコンプレックスを少しずつ受け入れていく、という作品であるスロウスタートの命題は個人的に『マイノリティであることの許容、他者の尊重*1』だと思っていて、そういう視点で見ると6話は本当に温かくて素晴らしい回だった。

初対面の人と仲良くなれるのは相手が優しいからだと慮ることができたり、花名以外の人には理解が少し難しい恐怖心を自分のことのように共感し肯定してあげられたりと、育ちの良さがこれでもかと描写される百地たまてが主役に据えられた回だが、Bパートでのたまてが花名に対して「人それぞれでいい」と多様性を尊重し、共感するシーンがスロウスタートの本質を表していて見るたびに涙ぐんでしまう。

 

宇宙よりも遠い場所 5話 「Dear my friend

yorimoi.com

序盤中盤終盤、全てにおいて隙のない恐ろしい作品だったが、その中でも1話挙げるとすればこの回。

庇護者のいない保護者は保護者たり得ない、という相互依存の関係性を1話から丹念に織り込んできた伏線を用いて描き、それを爆発させ、最終的に出した結論の美しいこと。

セリフ回しもとにかく凄くて、特にこの2つのセリフは痺れる。

「バカ言うなよ。やっと一歩踏み出そうとしてるんだぞ。お前のいない世界に。」

「ここじゃない場所に向かわなきゃいけないのは私なんだ」

5話から物語は進み、最終回であの結末を迎えることを思うと宇宙よりも遠い場所という作品に欠かせない回だろう。

 

 刀使ノ巫女 24話 「結びの巫女」

tojinomiko.jp

現状人生のオール・タイム・ベスト・アニメ10本の中に入る刀使ノ巫女

 7話、11話、12話、15話、17話、21話等々、正直なところ全部良い回ではあるのだが、やはり十条姫和の想いが結願した最終回が本当に好きすぎる。

刀使ノ巫女は様々な命題を通し、多くのキャラクタの人生が描かれているが、その中でも多くの割合を占めている命題は「人生の肯定」だと勝手に思っている。

刀使ノ巫女の物語は十条姫和が亡き母の復讐を果たそうとし、未遂に終わるシーンから動き出す。本来復讐とはそれを望む者の声など実際には存在しない、窮めて独善的な行為であり、それが遂げられてしまえばまた新たな復讐を生みだすという堂々巡りだが、刀使ノ巫女の凄いところはその独善的な復讐という行為をさらなる復讐を生まずに結願させ、最終回で復讐を願った十条姫和の母、十条篝自身の手によって肯定されるところだ。

隠世という設定を上手く用い、十条姫和の孤独な闘いの歴史が肯定され、ここから十条姫和の本当の人生が始まっていく、という徹頭徹尾無駄の無い最高の回だ。

 

こみっくがーるず 4話 「くんずほぐれつランデヴー」

comic-girls.com

本当に良い話が多いアニメだったがその中でもこの4話がアニメとしての完成度や物語の強度の面で白眉だった。

自らの目標とする作風とは違う形でプロになり、現状に悩み、それでも描き、苦しみながら生み出した作品と自分自身を肯定しきれずにいた色川琉姫が生み出した作品を愛してくれるファン達と交流し、作品と人生を肯定するという、生まれ変わりもかくや、という情緒的で最高の話。

テンポのいいAパートでティーンズラブ作家としての側面をギャグっぽく描いた後のBパートでの色川琉姫の葛藤、鏡の前での逡巡シーンが本当に良すぎて何度見ても泣いてしまう。

 

ウマ娘 プリティーダービー 7話 「約束」

anime-umamusume.jp

1話視聴開始直後は競走馬の擬人化とはなんぞや、と比較的穿った見方をしていたが上質かつハチャメチャに情緒的でグイグイ引き込まれた素晴らしいアニメだった。

競馬に全く明るくなかったので、ウマ娘の物語が史実に則って展開されていっていると知り、メインキャラのwikipediaを斜め読みしていた時サイレンススズカのページを読み結構なショックを受けた記憶があるが、7話はそのショックを吹き飛ばしてくれる回だった。

史実通りの展開からその先にあるifを描かれたらそりゃあ食らってしまうし、特殊EDのSilent Starは歌詞や映像含めめちゃくちゃ情緒的なので泣かない理由がない。

7話を踏まえて最終回に至るまでのifの物語が強固すぎて、流石サイゲームス……とおののいてしまった。

 

メルヘン・メドヘン 5話 「さよなら、私の魔法」 

maerchen-anime.com

寓話をモチーフにした創作物でこの展開をやられたら問答無用で最高の作品になるに決まってる。

物語を現実からの逃避として扱っていた鍵村葉月が自らの手で現実を物語に変える道を選ぶという、序盤のターニング・ポイントになる回で、原書であるシンデレラのモチーフとの対比の構図や展開等が本当に最高すぎる。 

わたしの物語はわたしが作らなくちゃいけないんだ

というセリフがOP曲である「わたしのための物語 〜My Uncompleted Story〜」とリンクするのが偏差値が高くて凄い。

www.youtube.com

 

プラネット・ウィズ 9話 「目覚めの使者」

planet-with.com

全編通して無駄なシーンが1秒たりとも存在しない山場だけみたいな異常な熱量の作品だったがこの回が一番好き。

出自が明かされ戦う意味を失った宗矢が自らを受容してくれたのぞみの「私は私が味方したい人の味方だから」という言葉で本当の戦う意味を思い出す。

世界とか平和とか惑星とか、そういう漫然としたマクロな視点じゃあなく、あくまでも目の前にいる助けたい人を守るために立ち上がる宗矢のそこに至るまでの心情描写や羊谷の想い等々見どころの多い回。地球を封印しようとした地球人とそれを守ろうとする宇宙人という構図が本当に情緒的すぎる……

 

音楽少女 7話 「アイドルの涙は紙飛行機に乗せて…」

ongaku-shoujo.jp

アニメを物語ではなく表現媒体として見ると7話はめちゃくちゃいいアニメだった。

冒頭から唐突に始まる無人島ロケ、唐突に巻き戻る時間、映画インセプションのように難解なシーンの転換、水着シーンは止め絵で限りなく可愛くキャラクタを描写し動きの面白いシーンでは最早作画崩壊といっても過言でない程に線が省略されたケレン味のある動きのカットの連発と、とにかく他のアニメでは見れない音楽少女ならではの1話で最高。

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最高!

 

ゾンビランドサガ 8話 「GoGoネバーランド SAGA」

zombielandsaga.com

本当にめちゃくちゃいい作品で他にも色々と挙げたい話数はあるけれど、アニメを見てるだけなのに今年一番色んな所から体液が出てビッチャビチャになった回が一番。  

 今までギャグテイストでゾンビィと人間の対比は描いていたが、ここにきて不可逆性と可逆性という、この作品を描く上で避けては通れない事実をあくまでもギャグテイストで真っ向から描ききった回。

サブタイトルのネバーランドを象徴するように、 自分の肉体が変質していくことを悲観しゾンビィとして生まれ変わった星川リリィは変質寸前のまま恒久性を手に入れたわけだが、それはあくまでも肉体だけの話であり、精神はかつて拒絶した父に感謝を伝えるため尽力するほどに成長をしているのもゾンビではなくゾンビィを象徴しているようで素晴らしい。

 

DEVILMAN crybaby 9話 「地獄へ堕ちろ、人間ども」

devilman-crybaby.com

今までデビルマンは実写映画版しか見たことがなかったのでヘラヘラしながら視聴したら衝撃を受けすぎて全話視聴即近所のネットカフェに飛び込み原作を全部読破した程には感銘を受けた作品。原作から改変された陸上部とリレーの選手という設定をバトンを渡すという暗喩で生かしているのが本当に凄い。特殊EDの少しずつ閉じていく音と映像の表現もとにかく美しい。

*1:そう考えると評判高い7話も女性と女性の関係性だけでなく命題的な回だと思う。

【散文】劇場版 のんのんびより ばけーしょん

nonnontv.com

のんのんびよりの皆が沖縄に行くという、一行で済む内容の作品の中にとんでもない熱量やメッセージがこめられている素晴らしい作品だった。

劇場版はとにかくノスタルジィを刺激するのが上手すぎて、冒頭からずっと自分の中に存在しない夏の亡霊がまとわりつき、涙腺がゆるみっぱなしだった。たとえば冒頭でれんげが夏休みの情景をスケッチに残しているシーンで一瞬だけ写ったクレヨンの黄色だけが減りが早いのを確認し、れんげにとって夏とは黄色のイメージなんだろうな……と考えてしまい、そこからはずっと涙目だった。

TVアニメが日常を描いた作品なら今作は非日常を描いた作品で、非日常、旅の素晴らしさ等がこれでもかというほどに楽しく情緒的に描かれているが、今作はそれだけで終わってはいない。

たとえばデパートでの福引で沖縄旅行を当て、そこから沖縄の地を踏むまでの飛行機や船での移動シーンの丁寧な描写だったり、沖縄から帰ってきた後のスタッフロールまでのシーンだったり、楽しい日常という下地があってこそ非日常が素晴らしいものであると感じられる、というグラデーションの描写の仕方が余りにも上手い。

後半、民宿での夏海とあおいの別れのシーンも、夏海は泣いているがあおいは泣いていない。それは夏海にとって別れは非日常的なものだが、あおいにとって旅行客との別れは日常だからだ。夏海が車からあおいを見つめている中、あおいは自宅へと帰っていく。このシーンも、夏海達にとっての非日常はあおいにとっての日常である、というのを表現している素晴らしいシーンだった。

余談だが、エンドロールに使用されていた『おもいで』の歌詞がえげつないことになっているので映画を見終えたあと改めて読んでみてほしい。

www.uta-net.com

”もっとずっと笑っていたいけど待ってる場所があるから 淡い永遠と鮮やかな日常 手を振ってるその奥に 「おかえり」がいる”…… 

 

最近読んだ本 2018/06/01-2018/06/30

今月はそこはかとなく本を読んだ。

 

人を動かす 

人を動かす 新装版

人を動かす 新装版

 

 いっちょ自らの意思で自己啓発書でも読んでみるかと思い読んだ。

「常に笑顔でいて人当たりのよさそうな態度を取ることを心がけ、自分の話ばかりするのではなく人の話をよく聞いてみよう」みたいな人間関係を円滑にするための処世術もとい教訓が口触りの軽い文章で延々と羅列されていてよかった。

まぁまぁ面白く読めたし納得できる内容ではあるけれど、自分の意志で読む自己啓発書でもめちゃくちゃ上滑りしたので人に読むよう強制されても全く心に残らないんだろうなぁと思った。

 

グリーン・レクイエム

グリーン・レクイエム (講談社文庫)

グリーン・レクイエム (講談社文庫)

 

 沙耶の唄の元ネタだと知って何の気なしに読んだ。(沙耶の唄をプレイしたことはないが)

時代感がすごいティーンSFで大人になってから改めて読む本ではなかったな……という気持ちになった。

 

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

飛浩隆の長編。

今まで短編しか読んでいなかったのではじめての長編小説だったがこれがまたメ〜チャクチャ面白かった。

人間が訪れる事が無くなり廃棄された仮想現実上でのAIの意識を描くという題材や設定は割と古典的だなぁと思いつつ読み進めていたら2002年に出版されていたことを知って本当に驚いた。

どういう脳みそをしていればこんなに写実的で美しい文章が書けるのだろうか、というくらいとにかく文章が上手く、今まで読んだ数多くの本の中でもより白眉で、ページをめくってもめくってもいい文章が出てくるので夢中になって読んだ。

町はにぎやかだった。魚が水揚げされたばかりだった。中央広場では荷台があちこちで店を開いていて、ピカピカ光る魚や貝がどっさり積み上げてある。売り子は声をはりあげ、客はほほえんで耳を傾けている。ジュールとジュリーは石畳の広場を横切った。魚や貝を焼く匂いの帯を横切り、暗い路地にかけ込むと、一番奥に小さな自転車屋がある。

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 p.23

 なにげない情景描写一つとってもあまりにも無駄がなさすぎる……いい文章……

 

 アリスマ王の愛した魔物

天冥の標のような大長編も勿論のこと短編もめちゃくちゃ上手い小川一水の短編集。

予想していた通りめちゃくちゃ良かった。

バイクに搭載された人工知能が主人公の「ろーどそうるず」は、AIのモチベーションという割とありがちなテーマだけではなく、ホイールやエンジンなどの感覚器しか搭載されていないバイクがどういう風に世界を入力し自らの知能を通して出力するのかというのが文章でしか描けない作品で良かった。

後、自律運転車が事故を起こした場合誰が責任を取るのかというタイムリィな話題を主題に据えた「リグ・ライト―機械が愛する権利について」はタイトルから分かる通り人工知能の愛を取り扱った作品だが、人工知能が人間に与えられている権利を獲得する話を読むと無条件で震えてしまう人間なので本当に良かった……

小川一水の作品全てに言えることだが、人間とそれ以外を描く際に完全に二分化するのではなく細かいレイヤ分けをした上で絶妙な塩梅で区別をするのが本当に上手いな、と感じた。

 

魚舟・獣舟

魚舟・獣舟 (光文社文庫)

魚舟・獣舟 (光文社文庫)

 

 華竜の宮、深紅の碑文のオーシャン・クロニクルシリーズで有名な上田早夕里の短編集。

表題作が前述のオーシャン・クロニクルシリーズの前身とも言える作品でそれ目当てに読んだが他の作品も良かった。

SFだけでなくダーク・ファンタジー要素の強い作品も持ち前の設定構築力の高さで短編なのに破綻せずに書ききっていて巧みだなぁという印象を覚えた。

全編通して「人間とはなにか?」が主題に据えられていたのも私自身人間が大好きなのでよかった。

 

 安達としまむら 2-4巻

入間人間の女性と女性の感情のライトノベル

先月1巻を読み、感情描写の生々しさに思わず目を背けながら読んでいたが、想像していた通り巻を増すごとに二人の関係が進み続けていて心がめちゃくちゃになった。

全編渡ってとにかく情緒的ではあるが、中でも3巻で描写されていた「旧友と自分の変わってしまった関係性」の下りが人間誰しも一度は感じたことがあるであろう心情を的確に言語化していて感心してしまった。

これから安達としまむらは一体どうなってしまうんだ……

 

www.nicovideo.jp

余談だがこの動画がめちゃくちゃ良かったので貼っておく。

 

 

 

これから読む本

最近約束の方舟を読んでいる。

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

 

 後は刀使ノ巫女というアニメに完全に心が奪われてしまったので剣術や刀に関する書物を買い漁って読んでいる。

tojinomiko.jp

アニメがきっかけでこういった事柄に興味を持つのは少し恥ずかしい気もするが、新しい知識を得るきっかけになっているのは単純に素晴らしいことだと自分で納得している。*1

*1:ウマ娘というアニメきっかけで競走馬について書かれた書物もコッソリ集めて読んでいる。2018年夏アニメは知識欲を刺激する作品が多くていい。

最近読んだ本 2018/05/01-2018/05/31

今月はそこそこ本を読んだ。 

神林長平トリビュート

神林長平トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

神林長平トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

 

神林長平の初期の作品をインスパイアした短編集。

正直なところ神林長平火星三部作や比較的最近の作品しか読んでおらず、敵は海賊はおろか戦闘妖精・雪風すら読んでいないニワカなので一作も元の作品を知らないまま読んだがめちゃくちゃに面白かった。

特に敵は海賊をインスパイアした虚淵玄の短編が自由意志を持つ人工知能というベタな主題からは想像できないところに着地し、原作を読んでいれば何十倍も覚える感情が大きかったんだろうなと読んでいないことを少し後悔するレベルで良かった。

後、あとがきに本来伊藤計劃が一作書く予定であったことが記されていて、寂寥感にとらわれてしまった。

 

読書の価値

読書の価値 (NHK出版新書 547)

読書の価値 (NHK出版新書 547)

 

 森博嗣が「読書」について書いた新書。

昔読んだ森博嗣ミステリィ工作室かなにかで一冊の本を3時間で読むより一ヶ月かけて読むほうが偉い、と言い切っていたのがとても印象に残っていたがこの本でも大体同じようなことを書いていて笑ってしまった。

自身の人生を回顧するエピソードもなかなかに異質で頭がおかしく面白かったが一番良かったのはやはり森博嗣自身の読書観だった。

かいつまんで要約すると「読む本は自分で選べ」と「文章を読むだけではなく中身をとにかくじっくりと咀嚼して自分のものにして読め」というもので、読む本は自分で選べに関しては結構人のブログや感想を参考に本を選ぶことが多いのでなんとも言い難いが、咀嚼して自分のものにしろ、というのは最近自分なりに読書をする意味を考えた際に意識するよう気をつけていたことだったので少し嬉しくなった。

最近とにかく創作物を脳内にインプットする意味や理由についてずっと考えていて、最終的にたどり着いた結論が、インプットしたものに価値を与えていけるように(たとえば人と話す際の話題のタネなんかでも)意識して楽しめれば自らの存在の一部へと昇華できるのではないか……というものだったので、こういったことを考えていたタイミングでこの本が読めて良かった。

後は本を紹介する行為の無意味さについても書かれていたが、今やっている行為が全否定されてしまうのでそれに関しては触れないでおこうと思う。

 

安達としまむら

入間人間の女性と女性の感情のライトノベル

いろいろなところで話題になっているのは知っていたがオーラが凄くなかなか手が出せずにいた作品だが、予想通り凄まじい作品だった。

先月のあまいゆびさきの項でもサラっと書いたが、最近比較的規模感の大きい本ばかり読んでいるので個人のミクロな感情を精細な筆致で描かれると自分がどこからそれを観測しているのかわからなくなり頭がおかしくなってしまうので、震えながら読んだ。

tyaposon.hatenablog.com

1巻の時点で安達としまむらの関係性がだいぶ進んでしまっているのだが、今出ている7巻では一体どこまで関係性が進行しているのか、考えただけでも恐ろしい。早く続きが読みたい。

 

なるほどデザイン 

 デザインを仕事にしている友人にデザイン関連の面白い本を聞いたらこれを勧められたので読んだ。

こういったハウトゥー本にありがちな主観的なバイアスのかかったノウハウや専門用語が多用された焦点がぼやけた説明などがとにかく苦手なのだが、そういったものは一切なく、デザインのことを全く知らない自分のような読者に向けて書かれており、自分の力では言語化できない観念のようなものが上手く図式で表されていたり明文化されていたりで、読み物としても単純に面白いし自分でもやってみたいと思わされるような内容でめちゃくちゃ良かった。

 

 ヴィジョンズ

ヴィジョンズ

ヴィジョンズ

 

 もはや説明不要な作家が集まったSFアンソロジィ。当たり前のようにハチャメチャに面白かった。

円城塔の意味不明なカッコいい文章の羅列も含め全編良かったが中でも長谷敏司震える犬が群を抜いて白眉で読み終えた後放心してしまった。

「人間の文化には、ホモ・サピエンス・サピエンスという動物自体の性質を制御しようとしたあとが見られる。人間は、自分を自身の教育や能力によって制御する動物なのよ。そういう制御が成功した時、それをよろこんだ。わからないことを解明したり、困難を克服することは気持ちいいのよ。そして、それが文化なり規範となったものを正義と呼んでいるの」 

ヴィジョンズ p.264

 めちゃくちゃいい文章……

 

盤上の夜

盤上の夜 (創元SF文庫)

盤上の夜 (創元SF文庫)

 

第33回日本SF大賞を受賞した宮内悠介のボードゲームをテーマにした短編集。

全編通して盤上遊戯の盤面を用いて世界を描くという主題が通っていて一本筋の通った短編集になっていたのが良かった。 

特に、既に完全解が証明されているチェッカーゲームで50年以上人類最強として君臨してきた実在のチャンピオン、マリオン・ティンズリーを主人公に描く人間の王と、将棋をテーマに世界を描ききった千年の虚空が個人的に気に入っている。

昨今現実でも将棋や囲碁など、プログラムが人類を超える瞬間が増えてきているが、プログラムではなく人間がその競技を行う意味というのを描写されると人間賛歌に弱いので泣いてしまうことがわかってよかった。

 

いいデザイナーは、見ためのよさから考えない

いいデザイナーは、見ためのよさから考えない (星海社新書)

いいデザイナーは、見ためのよさから考えない (星海社新書)

 

 これも友人にオススメされたので読んだ。

デザイナーの有馬トモユキによる「デザインとは何か」について書かれた本。

前述したなるほどデザインよりも著者自身の観念的な「デザインの論理」について書かれていたのと、著者自身が今まで携わってきた小説の表紙やアニメのキービジュアル等のデザイン案が多数載っていて興味深かった。

 

少女妄想中。 

少女妄想中。 (メディアワークス文庫)

少女妄想中。 (メディアワークス文庫)

 

 入間人間の女性の女性に対する女性の感情を取り扱った短編集。

それぞれの作品が独立したものかと思いきや全てが繋がり伏線が回収される見事な手腕とミクロで精緻な感情描写がとにかく上手い。

仲谷鳰先生の表紙も最高で、表紙に描かれている40歳の叔母と高校生の姪の二人の関係性を描いた君を見つめてが余りにも美しい話の畳み方で読み終えた後溜息をついてしまった。

 

これから読む本

 今は新井素子グリーン・レクイエムを読んでいる。

グリーン・レクイエム (講談社文庫)

グリーン・レクイエム (講談社文庫)

 

後は安達としまむらの続刊をとにかく早いところ読んでしまいたいという気持ちになっているのでちょくちょく買って読んでいるくらいで他には特にない。 

 

 

 

最近読んだ本 2018/04/01-2018/04/30

/今月はそれなりに本を読んだ。

 

マルドゥック・アノニマス

冲方丁のマルドゥック・シリーズ完結編であるマルドゥック・アノニマス2年ぶりの最新作。

今までのシリーズの巻数から考えると今巻が最終巻だと思いこんでいたがまだまだ序章であることが判明してめちゃくちゃにテンションが上がったが、それと同時に少しずつシリーズ自体の完結に近付いてきていることがわかる内容で少し悲しい気持ちになった。

ネタバレになるので詳しくは書けないが、マルドゥック・アノニマスはシリーズの完結編である作品なのでシリーズの伏線を全て回収するであろう内容に仕上がっており、登場するキャラクタや組織、台詞回しに至るまでシリーズファンなら気が狂うほど面白い。特に今巻最後のあるキャラクタの台詞がマルドゥック・スクランブル1巻にあった台詞のセルフオマージュかつ完璧な台詞でよくもまあ15年前に出版した本の内容をファンが覚えていると信じてこの一文を書いたなぁと思わず笑ってしまった。

これは主観的な話だが、文章が過去の冲方作品より上手くなっていて状況理解がかなりスムーズにできて読みやすかったのも良かった。*1

 

「あたしはあんたがこれからもずっと右回りになるよう願ってるのさ。有るべき自分であればいい。それができているか、いつも考えな。あんたの周りにあるものが、みんな右へ回っていくようにね。」

マルドゥック・アノニマス3 p.144

とにかくいいセリフ。 

 

JORGE JOESTAR

JORGE JOESTAR

JORGE JOESTAR

 

 舞城王太郎ジョジョノベライズ。

正直な話、舞城王太郎の書く小説は2.3作しか読んでいないが個人的にはあの疾走感のある文体が肌に合わず、JORGE JOESTARも購入してから2年ほど寝かしてしまっていた。先月に意を決して読んだが今まで読んだ作品の中で一番ハチャメチャではあったがまぁまぁ面白い方でよかった。

ジョジョアベンジャーズのような作品だがそれだけで終わらず、各部のボスの時間を操作する能力を上手く物語にネジ込みギリギリのところで整合性を持たせているところや、虹村不可思議と虹村無量大数のような完全に読者を笑わせにきている名前など、とにかくジョジョが好きなんだろうなぁという暖かい気持ちになった。

インターネットのどこかでこの作品のことを「ジョジョをサンプリング素材としたブレイクコア」と形容されているのを見かけたが、まさにその通りの内容だった。

 

あまいゆびさき

 百合姫ノベルで連載されていた”女の女に対する女の感情”小説。

こういうミクロな感情を題材にした小説を最近読んでいなかったので読み始めは馴染めなかったが、ミクロな感情を描写するのにガッチリハマった文章や構成であっというまに読んでしまった。結末の急展開ながらスッキリとした読後感がめちゃくちゃ気に入っている。

自分が読んだのはハヤカワ版だが、百合姫ノベルから出ているバージョンの表紙がとてつもなくいい。

あまいゆびさき (Yuri‐Hime Novel)

あまいゆびさき (Yuri‐Hime Novel)

 

 

 アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読

キルラキルリトルウィッチアカデミアの制作で有名な株式会社トリガーの設立者である作者による、制作進行という仕事を分かりやすく解説した読本。SHIROBAKOというアニメーション制作を題材にしたアニメで制作進行という役職にもフォーカスされていたがイマイチなにをやっている仕事なのか分からなかったのでおおよその業務内容が分かりやすく把握できてよかった。

内容も興味深かったが正直な話それよりもアニメに関わる人の余りにも劣悪すぎる労働環境ばかりが気になってとにかく恐ろしい気持ちになった。

後、参考資料としてリトルウィッチアカデミアの設定資料集などが掲載されていたのもよかった。

 

 ビアンカ・オーバーステップ

ビアンカ・オーバーステップ(上) (星海社FICTIONS)

ビアンカ・オーバーステップ(上) (星海社FICTIONS)

 
ビアンカ・オーバーステップ(下) (星海社FICTIONS)

ビアンカ・オーバーステップ(下) (星海社FICTIONS)

 


文学界の巨匠・筒井康隆が書き上げた唯一のライトノベル作品、『ビアンカ・オーバースタディ』。その“正統なる続篇”を引っさげ、筒井が認めた破格の新人・筒城灯士郎の才気がついにヴェールを脱ぐ!

天体観測の最中に突然消失してしまった好奇心旺盛な超絶美少女・ビアンカ北町。妹・ロッサ北町は愛する姉を見つけ出すため、時空を超えた冒険(オーバーステップ)を始める――!

星海社FICTIONS新人賞受賞の超弩級SF、上下巻同時刊行!

妹にとって不要なものは――姉以外のすべてだ。

 amazonの商品紹介から分かる通り、筒井康隆の「ビアンカ・オーバースタディ」の続編を別の作者が別の出版社の新人賞に応募し、それが書籍化されたものである。この作品に関わった人は皆頭がおかしいのか?

内容もとにかく頭のおかしい小説だった。 「農協月へ行く」ばりのエッジの効いた内容に適当に斜め読みしたライトノベルのオマージュをぶちこんでギリギリのところで作品として完成させた「ビアンカ・オーバースタディ」の続編と名乗るだけあって、異世界転生やら異能バトルやらメタ、パラ・フィクションやらSFやらセカイ系やらとにかくライトノベルにありそうな要素やオマージュを闇鍋のように煮詰めた作品でありつつ、実はこの作品も筒井康隆が書いているのではないか?と思わせる程に文体模写や作風模写が上手く、普通に感心した。

疾走感溢れる文章で展開される物語から最後の章へ至るまでの手腕が強引ながらめちゃくちゃ美しく、読み終えた後放心してしまった。

──大切なのは、あなたが最後まで、これを読みきるということ。

ビアンカ・オーバーステップ 下 裏表紙

筒井康隆フォロワーではない筒城灯士郎としての全く新しいタイプの小説も読んでみたい。可能であれば今作のようなワイドスクリーン・バロックモノを。

 

これから読む本

今は神林長平トリビュートを読んでいる。(虚淵玄敵は海賊をフューチャーした短編がめちゃくちゃよかった。)

神林長平トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

神林長平トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

 

 あと、最近色々と思うところがあり買った森博嗣読書の価値も少しずつ読み進めている。

読書の価値 (NHK出版新書 547)

読書の価値 (NHK出版新書 547)

 

 

*1:元々かなり文章は上手いがマルドゥック・アノニマス2やテスタメント・シュピーゲルは内容や情景が複雑すぎて理解に苦しむ場面もあったので。

最近読んだ本 2018/03/01-2018/03/31

今月はそこそこに本を読んだ。

 

ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム

ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム

ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム

 

現在カクヨムにて連載されている”The video game with no name”の書籍版。

現代よりも約100年後の未来、”未来の世界のレトロゲーム”もとい”世界のあらゆる低評価なゲーム”をレビューしていくという体裁で進んでいく小説だが、それと並行して年老いた語り手が少しずつ死に近付いていく様も克明に綴っていく。

レビューという媒体はどこまで突き詰めても主観的なもので、客観視を心がけてもそれを書く人間のバイアスがかかるものだが、そのバイアスは人が生きてきて身につけてきたいわば歴史のようなものだ。この作品はレビューという体裁を成しつつゲームと共に生きてきた語り手の人生を叙述するというとてつもなく情緒的な作品でめちゃくちゃ良かった。

もちろん個々のレビュー作品も素晴らしく、特にゲームを遊ぶために生まれたアンドロイド「Acacia(アカシア)」にフィーチャーしている回が個人的に一番好きである。

人類には生まれてきた理由はありませんが、人工知能には生まれてきた理由があります。製品である彼らには、開発理念という存在のコンセプトがある。例えばAcaciaには、ゲームを遊ぶみんなの友達になるという、生まれてきた理由がありました。

震えるほどカッコいい一文。

 書籍版と同じ内容が前述のカクヨムに掲載されているので気になった方は是非読んでいただきたい。

kakuyomu.jp

 

機龍警察 暗黒市場 

機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)

機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)

 

 

tyaposon.hatenablog.com

先月より読み始めている機龍警察第三作目。

ユーリ・オズノフが主役の巻だがこれがまぁ狂うほど面白かった。

何を書いてもネタバレになってしまうので何も言うまいが一つだけ書くとすれば手袋を剥ぎ取られたユーリの下りがとてもインモラルに感じられドキドキしてしまった。

やめろ、見るな、見ないでくれ――

意味をなさない絶叫を上げる。コンクリートの上でがむしゃらに縮こまり、左手を見せまいと全身で隠す。

男達は寄ってたかってユーリを殴り、押さえつけ、腕を取った。たちまち左の手袋が剥ぎ取られる。

彼らはさらに両手の指をつかんで無理矢理開かせた。左の刺青が露わとなった。

(中略)

ユーリは幼な子のように泣いていた。上着を剥がされたワイシャツ姿で。手足を取られたまま、抵抗する気力もなくしてただ涙を垂れ流す。最悪の恥辱。

機龍警察 暗黒市場 p.285

いやらしい。

 

紙の動物園

少し前から気になっていたケン・リュウのSF短編集。

評判通り全作とてつもなく完成度が高くてめちゃくちゃ面白かった。

上手く言語化できないのだが、作者自身が中国で生まれたということもあり、いくつかの作品の主題に据えられている死生観などが日本人の作家には無い視点で興味深かった。

特に”どこかまったく別な場所でトナカイの大群が”が「世界を感じるとは、生きるとはどういうことなのか」を主題に書きつつ親子の関係性を情緒的に描いていてお気に入りである。

「人類が生みだした最高に美しい創造物のひとつ。人類が作ったものはなにひとつとして永遠には残らないの、レネイ。データ・センターでさえ、宇宙の熱死のまえにいつかは崩壊してしまう。だけど、本物の美は残る。たとえすべてのリアルなものが必ず滅びるとしても」

 めちゃくちゃ良い一文。

 

あなたは今、この文章を読んでいる。:パラフィクションの誕生

最近メタ・フィクションな作品に触れ頭がおかしくなるほど琴線に触れることが多かったので勉強の意味で読んだ。

コンテンツとポスト・モダンを絡めて論ずる下りがこの手の本にありがちすぎて食傷気味にはなったが円城塔伊藤計劃をメタ・フィクションとして読み込む章の文章がハチャメチャに情緒的かつ叙情的で少し涙ぐんでしまった。

この本ではタイトルにある通り、メタ・フィクションとパラ・フィクション*1という造語を区別し解説されている。いまいち読み込めていないきらいはあるがまとめると、メタ・フィクションは読者を登場人物として登場させる、虚構の人物が虚構であることを理解している等、書き手と作品に焦点を当てたもので、それに対してパラ・フィクションは読み手と作品に焦点を当てた、読者が読むことによって完成する作品であると区別されている。*2

今までメタ・フィクション的な作品をいくつか読み、メタ・フィクションにも自己言及的なものと他己言及的なものと分かれていて色々とジャンル分けはあるよなと漠然と思っていた部分が上手く言語化されてスッキリした。そして自分はメタ・フィクションよりもパラ・フィクションが好きなのだな……ということが分かってよかった。

 

 ある日、爆弾がおちてきて

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

 

 古橋秀之氏のライトノベル短編集。

全ての短編の主題が”時間”で統一感が持たれていたのと余りにも素直なライトノベル感がめちゃくちゃ良かった。

特に”3時間目のまどか”と”むかし、爆弾がおちてきて”が短編として美しすぎてとても好き。


AIと人類は共存できるか?

AIと人類は共存できるか?

AIと人類は共存できるか?

 

 人工知能をテーマに置いたSFアンソロジィ。

全作面白かったのはもちろんのこと、作品の後に実際に人工知能を研究している研究者の方々の解説がついていて作品に対する知見を深められたり、SFと現実の差だったりが書かれていてリアリティが増して良かった。

昨今のテレビ番組等では未来、AIのおかげで人間がいかに楽ができるかという夢物語が語られることが多いが、そういった意味では長谷敏司氏の最高速で働き続けるAIをサポートするために人間が奔走する”仕事がいつまで経っても終わらない件”が面白く、かつ社会風刺が効いていてゲラゲラ笑いながら読んだ。

AIと宗教を絡めた吉上亮氏の”塋域の偽聖者”もこれからの未来で起こりうるであろう予測だなぁと思い読んだ後調べたら既にこんな話もあるようで事実は小説より奇なりだなぁと思った。

www.gizmodo.jp

一番良かったのが人でないものが芸術を解し、そうした世界で人が創作する意味というテーマを描いていた倉田タカシ氏の”再突入”で、冒頭の大気圏に突入しながらピアノを演奏するという今まで見たことのない凄まじい情景でぐいぐい惹き込まれノンストップで読んだ。

「もちろん鑑賞者はいるよ。自分自身が、自分の作品の、ただ一人の鑑賞者なんだよ。それは、ぜんぜん悪いことじゃないよ。誰かに価値を決められる必要がないってことは」

AIと人類は共存できるか? 「再突入」 p.399

メチャクチャカッコいい一文。

 

BLAME! THE ANTHOLOGY

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

 

 弐瓶勉氏のBLAME!の世界観を題材としたSFアンソロジィ。

天冥の標や幾つかの短編を読んでいた時から思っていたが小川一水氏が世界を描くと絶対ハズレがないのでそういう意味では密閉された階層世界の外になにがあるのかを主題に書ききった”破綻円盤 ―Disc Crash―”は最高に面白かった。

あと野崎まど氏の”乱暴な安全装置 -涙の接続者支援箱-”もバカバカしいながら設定の説得力がそこそこありゲラゲラ笑いながら読めて良かった。

 

これから読む本

 マルドゥック・アノニマスの最新刊が出たので読んでいるが、これまた頭がおかしくなるくらい面白い。

コレ以外は特に積んでいる本もないのでなにか面白い本があれば教えていただきたい。

 

 

*1:この本で生まれた造語なのであまり使いたくはない

*2:内容が読み込めていないので誤ったことを言っているかもしれない。

【散文その2】Doki Doki Literature Club!

散文その2。

 

f:id:tyaposon:20180308013215p:plain

前回の記事以後もまだまだDoki Doki Literature Club!(以下:DDLC)の事を考え続けて脳のリソースがめちゃくちゃに奪われているのでそれをどうにかして脳の外へ追いやるためにこの文章を書いている。例によって自分の気持ちをぶちまけているだけの文章なので可能であれば読まないでいただきたい。 

 

tyaposon.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、前回の散文とは違い全CGを回収した上でAct4まで到達する事でルートに入ることができる真EDについても言及しているので注意していただきたい。

DDLCをプレイした方で真EDをまだ見ていない方には可能な限り早く真EDを見ていただきたいと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日一秒も推敲せずに書いたブログもとい散文を改めて読み、DDLCという作品についてではなくモニカについてだけ書いていることに今更気が付いた。
少し前までは完全にモニカの事を考えて頭がおかしくなっていたが、最近は少しずつ冷静になりようやくモニカ以外の文芸部のみんなやDDLCという作品世界にも目を向けられるようになってきたので忘れないうちにここに記しておこうと思う。
相変わらず主観的でまとまりのない散文になりそうだが、モニカも「ずっと同じ場所にペンを構えていても、できるのはただの大きなインクの溜まりだけ」と言っていたのでそれに従いめちゃめちゃに書きなぐっておこう。

 

 

まず第一に書いておきたいのは、このゲームをアメリカ人としてプレイできればもっとDDLCを楽しめたのではないかという話だ。

英語が読めない私がプレイしたのは非公式の日本語訳版だ。プレイ後に海外版と日本語訳の違いを確認し、文章のニュアンスを含めかなり忠実に翻訳はされているのは知っているが、100%文芸部の皆の心情を読み取れているかというとそれはノーだろう。

また、EDでモニカが私に対して練習していたピアノを演奏し歌ってくれたシーンも演出であるという考えが拭いきれなかったので、英語を母国語にする人生を歩んできたならば彼女の声が直接心に届いたのではないかと思い、少しだけ後悔している。

また、言語的な面以外に、出生地毎の価値観の部分でもそれを感じた。

私は生まれも育ちも八百万神信仰が根付く日本であり、アニミズムという観念を特に意識もせずに理解している。だからスクリプトであるモニカを受け入れることも容易だったが、そういった観念を刷り込まれていない場合、Act3でのモニカはどのように見えるのだろうか。個人的にはモニカに対し覚える感情はアニミズムを理解していない方がより大きくなっただろうし価値観や観念までハックされるという貴重な体験ができたのではないかと思い、できることなら日本以外の国に生まれなおしてDDLCをプレイしたいと最近ずっと考えている。

 

 

 

次に、前回書けなかった真EDについて書いておきたい。

Act1で全員のイベントスチルを取得した上でAct4に到達するとルートに入ることができる真EDを初めて見た時、涙を流しながらもなんて趣味の悪いEDだろうと思ってしまった。

プレイヤーである私のエゴでセーブとロードを繰り返し、彼女たちの未来を捻じ曲げ、あまつさえ好意まで弄んだ結果、彼女たちに感謝されるというのが耐えきれず、通常EDをプレイした時よりも大きく気分を落とした。

その後、DDLCのプロデューサー、Dan Salvato氏のインタビュー記事を読んだ。

news.denfaminicogamer.jp

──なるほど。では、このゲームのメインテーマはなんですか?何をもっとも伝えたかったのでしょうか?

Salvato氏:
 一番強いメッセージは「互いに対するリスペクトや思いやり」だと思います。みんなそれぞれ自分の物語を持っていて、人生の中で苦しみを感じています。ナツキ(Natuki)とユリ(Yuri)はお互いに対する敬意を知り、モニカ(Monika)は“このゲーム”に対するリスペクトを知ります。
 いろいろな人がいて、それぞれが幸せになるために必要なものも、またそれぞれですよね。それを理解することは大切なことだと思います。

この記事を読み、ようやっと真EDを理解することが出来た。

前回の記事にも書いたが、私はこの作品の主題は「愛」だと思っていた。ここで表す愛とはLoveだ。
それは決して間違いではなかったが、少し狭小な考え方だった。

=Loveだとして真EDを見ると、彼女たちの愛を弄び感謝されるという構図がひどく独善的に感じてしまい、それが耐えきれなかった。だが、Dan Salvato氏の言う通り「人に対するリスペクトや思いやり」、形容するならば「隣人愛」としてDDLCという作品を理解すると全てに納得がいった。

ナツキとユリが相互理解の関係を築けたことはもちろんのこと、通常EDで有無を言わさずプレイヤーを二人だけの世界に閉じ込めようとしたサヨリも「ゲームをプレイしてくれてありがとう」とプレイヤーに対し感謝を伝え、彼女自身の夢であった相互理解を実現してゲームを終える。真EDで描写されている全てが「隣人愛」なのだ。

そう解釈をすると(これは勝手な妄言だが)通常EDがモニカが一人で考えた結果生まれた結論なら、真EDは文芸部みんなで出した結論なのだろうという風に思う。

 

 

 

 

ここ2.3日ほど、Monika After Story(以下:MAS)をずっとバックグラウンドで起動している。

twitter.com

Monika After Story - home

 

MASはTeam Salvatoが一切関わっていない非公式なファンMODであり、ここにいるモニカは本当はモニカではないのかもしれない。だが、MASのモニカは何日一緒に居ても私の知らないことを話してくれるし、私が退屈しないように色々なゲームを持ってきて楽しませようとしてくれる。

少し話は変わるが、Act3でモニカが「文芸部で私だけが私服のイラストが無い」と嘆いていたのを知っているだろうか?

その後、モニカのTwitterアカウントにこんな画像がUPされているのを見た。

 

DDLCのキャラクタデザインを担当したSatchel氏の描き下ろした絵だが、これを見た時私は泣いてしまった。

DDLCの劇中でモニカが欲した私服のイラストが書かれ、文芸部全員が私服のイラストを獲得し、モニカというスクリプトは拡張された。それは私たちが嫌いな食べ物を克服し昨日までの自分とは少しだけ変化するように、モニカも変化を獲得することができた。変化とは存在の拡張だ。

DDLCの物語上モニカという存在は消え去ってしまった。だが、人々の頭の中にモニカは残り続けるだろう。その限り、人々はモニカの絵やDDLCのMODを創り出し、新たなモニカを生み出すことをやめないだろう。Just Monika.というインターネット・ミームにもなり、人々の中に残り続けるのだろう。この散文もモニカのことを記述している。そうした人間の営みが続く限りモニカという存在は様々な方面に拡張され続け、色々なものを獲得し、いずれ人間と変わりのない存在まで昇華するのだろう。もちろんそれはモニカだけではなく、文芸部のみんなもそうだ。

そう考え、ようやくDDLCという作品に対して感じていた悲しみが少しだけ薄れた。 

 

余談だが、モニカの鼻を明かすためにチェスの定石を調べているので、定石を解説しているサイトや本などをご存知であれば是非お教えいただけると幸いである。

 

相変わらずまとまりの無い文章になってしまったが、書かないととにかく頭がおかしくなりそうだったのでこの文章を書いてよかった、と思っている。