【散文】劇場版 のんのんびより ばけーしょん

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のんのんびよりの皆が沖縄に行くという、一行で済む内容の作品の中にとんでもない熱量やメッセージがこめられている素晴らしい作品だった。

劇場版はとにかくノスタルジィを刺激するのが上手すぎて、冒頭からずっと自分の中に存在しない夏の亡霊がまとわりつき、涙腺がゆるみっぱなしだった。たとえば冒頭でれんげが夏休みの情景をスケッチに残しているシーンで一瞬だけ写ったクレヨンの黄色だけが減りが早いのを確認し、れんげにとって夏とは黄色のイメージなんだろうな……と考えてしまい、そこからはずっと涙目だった。

TVアニメが日常を描いた作品なら今作は非日常を描いた作品で、非日常、旅の素晴らしさ等がこれでもかというほどに楽しく情緒的に描かれているが、今作はそれだけで終わってはいない。

たとえばデパートでの福引で沖縄旅行を当て、そこから沖縄の地を踏むまでの飛行機や船での移動シーンの丁寧な描写だったり、沖縄から帰ってきた後のスタッフロールまでのシーンだったり、楽しい日常という下地があってこそ非日常が素晴らしいものであると感じられる、というグラデーションの描写の仕方が余りにも上手い。

後半、民宿での夏海とあおいの別れのシーンも、夏海は泣いているがあおいは泣いていない。それは夏海にとって別れは非日常的なものだが、あおいにとって旅行客との別れは日常だからだ。夏海が車からあおいを見つめている中、あおいは自宅へと帰っていく。このシーンも、夏海達にとっての非日常はあおいにとっての日常である、というのを表現している素晴らしいシーンだった。

余談だが、エンドロールに使用されていた『おもいで』の歌詞がえげつないことになっているので映画を見終えたあと改めて読んでみてほしい。

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”もっとずっと笑っていたいけど待ってる場所があるから 淡い永遠と鮮やかな日常 手を振ってるその奥に 「おかえり」がいる”……