恥の上塗り

恥の恥

【感想】総集編の意味──『劇場版フレームアームズ・ガール~きゃっきゃうふふなワンダーランド~』

総集編だと思ってヘラヘラした気持ちで観に行ったら上映後に動けなくなるくらい号泣してしまった映画「フレームアームズ・ガール~きゃっきゃうふふなワンダーランド~」についての感想(ネタバレあり)

 

前述の通り、ただの総集編と思って油断しているととんでもないことになるのであまりオススメしない。TVアニメを未視聴のまま観に行ってもおそらく体験としてはあまり優れたものでは無いと思う。 

この映画はフレームアームズ・ガール(以下FAガール)である轟雷たちとあおが「思い出映画鑑賞会」を開き、思い出を叙述ではなく編集された映像を見るように彼女たちが回顧し、思い出について語り合う、という体で進んでいく総集編だ。

 それだけならなんてことのない作品なのだが、上の予告編にも使用されているある台詞が不可解なもので、この作品をより難解にしている。それは上記動画のおよそ32秒の轟雷の「一体誰の思い出を見るんですか?」という問いかけに対してのアンサーである、「マスター、貴方との思い出だよ!」という台詞だ。

 映画館でこの台詞を聞いた時、私は混乱した。「貴方との思い出」とは一体なんなのか?

TVアニメ「フレームアームズ・ガール」という作品は、普通の女子高生である源内あおと轟雷や他のFAガールたちによる物語である。あおとFAガールの交流や成長を描いた作品であり、当然ながらそこに我々は存在しない。2017年にフレームアームズ・ガールのアニメを見たという思い出は我々の中に存在するものであるが、それを轟雷達が認識することはありえないはずだ。

少し横道にそれた話になるが、私たちが存在する基底現実にもフレームアームズ・ガールは存在する。

知っての通り、フレームアームズ・ガールの原初はアニメではなくプラモデルだ。

2014年秋のイベントで発表されたフレームアームズの擬人化シリーズ。『フレームアームズ』(複数形)と「ガール」(単数形)を組み合わせた作品名及びシリーズ名である。 

pixiv大百科より引用

 2014年に始まったこのシリーズは元々オリジナルロボットのプラモデルであるフレームアームズの擬人化コンテンツだ。轟雷から始まったこのシリーズはその後何体ものFAガールが生まれ、数多くのモデラーもといマスターを虜にしてきた。*1

その後2017年、メディアミックス作品としてアニメ化が放送され、アニメの設定を流用した漫画化、ノベル化がなされた作品が、我々のよく知る「フレームアームズ・ガール」という作品である。

 

話を戻そう。劇場版劇中での「思い出映画鑑賞会」の“思い出”とはなにか?

この“思い出”とは、アニメ「フレームアームズ・ガール」の思い出だけを指しているのではなく、コンテンツとしての「フレームアームズ・ガール」の思い出を指しているのだと私は考えている。

フレームアームズ・ガールはアニメだけのコンテンツではなく、プラモデルやそれを作るモデラー等々の応援や愛によって大きく成長してきたコンテンツだ。

劇場版のスタッフロールのスペシャルサンクスにて「フレームアームズ・ガールを応援してくれた全てのマスター」という一文が添えられていたのもおそらく作為的なものであると思っていて、フレームアームズ・ガールというコンテンツに我々マスターが存在しているということをスタッフロールで明言してくれているように感じてならない。

 

つまり劇場版「フレームアームズ・ガール~きゃっきゃうふふなワンダーランド~」は、あおとフレームアームズ・ガールの歩んできた物語の総集編を内包した、フレームアームズ・ガールというコンテンツそのものの総集編であると私は考えている。

この作品は我々観客、もといマスターが予め組み込まれた上で作られており、映画館の椅子に座りスクリーンで「思い出映画鑑賞会」が開始された瞬間、フレームアームズ・ガールという世界に内包されるという体験をフレームアームズ・ガールが好きでたまらない人は絶対にしておくべきだと思うので、是非観に行ってほしい。

 

 

 

*1:私自身はその方面に明るくないため過去のネット記事等からの印象だが、版権ではないオリジナルのプラモデルとしては類を見ないほどに商業的に成功していた、という記述ばかりが目に入ることから界隈の熱狂の程が伺いしれる。