恥の上塗り

恥の恥

話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

 毎年楽しみに見ていたブログ企画に参加してみることにした。

配信スケジュール等の関係で今期のアニメに関しては全話見れていない作品も多いのであくまで暫定的な結果として残しておく。

・2018年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。   

 上記ルールに則って記述していく。

 

  

スロウスタート 6話 「うなぎのぬるぬる」

slow-start.com

主人公である一ノ瀬花名が友達や周りの人々との交流を経るうちに中学浪人という過去のトラウマ、マイノリティであることへのコンプレックスを少しずつ受け入れていく、という作品であるスロウスタートの命題は個人的に『マイノリティであることの許容、他者の尊重*1』だと思っていて、そういう視点で見ると6話は本当に温かくて素晴らしい回だった。

初対面の人と仲良くなれるのは相手が優しいからだと慮ることができたり、花名以外の人には理解が少し難しい恐怖心を自分のことのように共感し肯定してあげられたりと、育ちの良さがこれでもかと描写される百地たまてが主役に据えられた回だが、Bパートでのたまてが花名に対して「人それぞれでいい」と多様性を尊重し、共感するシーンがスロウスタートの本質を表していて見るたびに涙ぐんでしまう。

 

宇宙よりも遠い場所 5話 「Dear my friend

yorimoi.com

序盤中盤終盤、全てにおいて隙のない恐ろしい作品だったが、その中でも1話挙げるとすればこの回。

庇護者のいない保護者は保護者たり得ない、という相互依存の関係性を1話から丹念に織り込んできた伏線を用いて描き、それを爆発させ、最終的に出した結論の美しいこと。

セリフ回しもとにかく凄くて、特にこの2つのセリフは痺れる。

「バカ言うなよ。やっと一歩踏み出そうとしてるんだぞ。お前のいない世界に。」

「ここじゃない場所に向かわなきゃいけないのは私なんだ」

5話から物語は進み、最終回であの結末を迎えることを思うと宇宙よりも遠い場所という作品に欠かせない回だろう。

 

 刀使ノ巫女 24話 「結びの巫女」

tojinomiko.jp

現状人生のオール・タイム・ベスト・アニメ10本の中に入る刀使ノ巫女

 7話、11話、12話、15話、17話、21話等々、正直なところ全部良い回ではあるのだが、やはり十条姫和の想いが結願した最終回が本当に好きすぎる。

刀使ノ巫女は様々な命題を通し、多くのキャラクタの人生が描かれているが、その中でも多くの割合を占めている命題は「人生の肯定」だと勝手に思っている。

刀使ノ巫女の物語は十条姫和が亡き母の復讐を果たそうとし、未遂に終わるシーンから動き出す。本来復讐とはそれを望む者の声など実際には存在しない、窮めて独善的な行為であり、それが遂げられてしまえばまた新たな復讐を生みだすという堂々巡りだが、刀使ノ巫女の凄いところはその独善的な復讐という行為をさらなる復讐を生まずに結願させ、最終回で復讐を願った十条姫和の母、十条篝自身の手によって肯定されるところだ。

隠世という設定を上手く用い、十条姫和の孤独な闘いの歴史が肯定され、ここから十条姫和の本当の人生が始まっていく、という徹頭徹尾無駄の無い最高の回だ。

 

こみっくがーるず 4話 「くんずほぐれつランデヴー」

comic-girls.com

本当に良い話が多いアニメだったがその中でもこの4話がアニメとしての完成度や物語の強度の面で白眉だった。

自らの目標とする作風とは違う形でプロになり、現状に悩み、それでも描き、苦しみながら生み出した作品と自分自身を肯定しきれずにいた色川琉姫が生み出した作品を愛してくれるファン達と交流し、作品と人生を肯定するという、生まれ変わりもかくや、という情緒的で最高の話。

テンポのいいAパートでティーンズラブ作家としての側面をギャグっぽく描いた後のBパートでの色川琉姫の葛藤、鏡の前での逡巡シーンが本当に良すぎて何度見ても泣いてしまう。

 

ウマ娘 プリティーダービー 7話 「約束」

anime-umamusume.jp

1話視聴開始直後は競走馬の擬人化とはなんぞや、と比較的穿った見方をしていたが上質かつハチャメチャに情緒的でグイグイ引き込まれた素晴らしいアニメだった。

競馬に全く明るくなかったので、ウマ娘の物語が史実に則って展開されていっていると知り、メインキャラのwikipediaを斜め読みしていた時サイレンススズカのページを読み結構なショックを受けた記憶があるが、7話はそのショックを吹き飛ばしてくれる回だった。

史実通りの展開からその先にあるifを描かれたらそりゃあ食らってしまうし、特殊EDのSilent Starは歌詞や映像含めめちゃくちゃ情緒的なので泣かない理由がない。

7話を踏まえて最終回に至るまでのifの物語が強固すぎて、流石サイゲームス……とおののいてしまった。

 

メルヘン・メドヘン 5話 「さよなら、私の魔法」 

maerchen-anime.com

寓話をモチーフにした創作物でこの展開をやられたら問答無用で最高の作品になるに決まってる。

物語を現実からの逃避として扱っていた鍵村葉月が自らの手で現実を物語に変える道を選ぶという、序盤のターニング・ポイントになる回で、原書であるシンデレラのモチーフとの対比の構図や展開等が本当に最高すぎる。 

わたしの物語はわたしが作らなくちゃいけないんだ

というセリフがOP曲である「わたしのための物語 〜My Uncompleted Story〜」とリンクするのが偏差値が高くて凄い。

www.youtube.com

 

プラネット・ウィズ 9話 「目覚めの使者」

planet-with.com

全編通して無駄なシーンが1秒たりとも存在しない山場だけみたいな異常な熱量の作品だったがこの回が一番好き。

出自が明かされ戦う意味を失った宗矢が自らを受容してくれたのぞみの「私は私が味方したい人の味方だから」という言葉で本当の戦う意味を思い出す。

世界とか平和とか惑星とか、そういう漫然としたマクロな視点じゃあなく、あくまでも目の前にいる助けたい人を守るために立ち上がる宗矢のそこに至るまでの心情描写や羊谷の想い等々見どころの多い回。地球を封印しようとした地球人とそれを守ろうとする宇宙人という構図が本当に情緒的すぎる……

 

音楽少女 7話 「アイドルの涙は紙飛行機に乗せて…」

ongaku-shoujo.jp

アニメを物語ではなく表現媒体として見ると7話はめちゃくちゃいいアニメだった。

冒頭から唐突に始まる無人島ロケ、唐突に巻き戻る時間、映画インセプションのように難解なシーンの転換、水着シーンは止め絵で限りなく可愛くキャラクタを描写し動きの面白いシーンでは最早作画崩壊といっても過言でない程に線が省略されたケレン味のある動きのカットの連発と、とにかく他のアニメでは見れない音楽少女ならではの1話で最高。

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最高!

 

ゾンビランドサガ 8話 「GoGoネバーランド SAGA」

zombielandsaga.com

本当にめちゃくちゃいい作品で他にも色々と挙げたい話数はあるけれど、アニメを見てるだけなのに今年一番色んな所から体液が出てビッチャビチャになった回が一番。  

 今までギャグテイストでゾンビィと人間の対比は描いていたが、ここにきて不可逆性と可逆性という、この作品を描く上で避けては通れない事実をあくまでもギャグテイストで真っ向から描ききった回。

サブタイトルのネバーランドを象徴するように、 自分の肉体が変質していくことを悲観しゾンビィとして生まれ変わった星川リリィは変質寸前のまま恒久性を手に入れたわけだが、それはあくまでも肉体だけの話であり、精神はかつて拒絶した父に感謝を伝えるため尽力するほどに成長をしているのもゾンビではなくゾンビィを象徴しているようで素晴らしい。

 

DEVILMAN crybaby 9話 「地獄へ堕ちろ、人間ども」

devilman-crybaby.com

今までデビルマンは実写映画版しか見たことがなかったのでヘラヘラしながら視聴したら衝撃を受けすぎて全話視聴即近所のネットカフェに飛び込み原作を全部読破した程には感銘を受けた作品。原作から改変された陸上部とリレーの選手という設定をバトンを渡すという暗喩で生かしているのが本当に凄い。特殊EDの少しずつ閉じていく音と映像の表現もとにかく美しい。

*1:そう考えると評判高い7話も女性と女性の関係性だけでなく命題的な回だと思う。