2017年読んで良かった本

 

誰とも交流せず家に引きこもりひたすらアニメを見て本を読んでいたら2017年が終わりに近付いてしまった。

今年は色々な作品に心を動かされたのでそれを忘れないために備忘録として記事にまとめておこうと思う。

 

天冥の標 

 

天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

 友人に薦められずっと気になっていたので2017年初めに全巻購入し4月頃まで黙々と読み進めた。

巻を読み進める毎にどんどん分かってくる気が狂うほどに丁寧に作られた世界観とキャラクタの造形、綿密な設定と張り巡らされた伏線で今年初頭は完全に頭がおかしくされてしまっていた。

現在同シリーズは13冊刊行されているが、その1冊1冊がほとんど違う作風で描かれているので読んでいて飽きる事が無かったので良かった。

1巻まるごとパンデミックSFを書いたかと思えば、続く巻では性愛をテーマにSF官能小説を書き、また別の巻では宇宙艦隊の戦いを描く。そんなサラダボウルのようなシリーズだが、描かれている全ての物語が重要な伏線もとい人類の歴史という馬鹿みたいにデカイ主題に繋がっているので、ページをめくる毎に世界を拡張していく感覚を味わえとても面白かった。

2018年に最終巻が刊行予定なので、今から楽しみである。

 

BEATLESS

 

BEATLESS

BEATLESS

 

 またまた日本のSFを語る上では外せない教科書のような作品だが、BEATLESSも今年読んだ。今年はSFに入門した年だったと実感している。最近シンギュラリティやらディープラーニングやらをテレビなんかで見かける機会も多いので丁度良いタイミングだったかもしれない。

語るまでも無い作品だと思うが、これはもうめちゃくちゃに面白かった。最高のライトノベルであり、最高のボーイ・ミーツ・ガールであり、最高のSF小説だが、この作品を読み一番心にデカイダメージを与えられたのがアナログハックという概念である。

”アナログハックとは、「人間のかたちをしたもの」に人間がさまざまな感情を持ってしまう性質を利用して、人間の意識に直接ハッキング(解析・改変)を仕掛けることです。 
 
人間は、人間の〝かたち〟をしたものに反応する本能を持っています。たとえば〝笑顔〟を描いた絵や映像を見ることで幸福な気持ちになることができます。あるいは、警官の絵を描いただけの看板を見て、警戒心を呼び起こされて車のスピードをゆるめたりします。 
 これは脳が持つ性質から、人間の意識が無意識にそう動くものです。 
 ですが、この性質は、我々の感情や意識が、〝人間のかたち〟をつくことで接触可能な、悪用のおそれがあるセキュリティホールを持っているのだとも言えます。”

www63.atwiki.jp

 

今まではドラえもん のび太の海底鬼岩城のバギーちゃんの最期に涙し、楽園追放のフロンティアセッターに心を打たれる程度には心を持ったロボットにこれといった違和感を抱いていなかったが、BEATLESSを読み終えた後に触れた作品に人工知能やヒトの形をしたモノが登場して感情や自我の話をしだすとファイティングポーズを取るようになってしまった。

余談だが、2017年放送されたアニメにフレームアームズ・ガールという作品があり、この作品は丁度自分がBEATLESSを読んでいる最中に放送されていた。

作品に登場する人口自我AS(アーティフィシャル・セルフ)を搭載したロボット、轟雷が様々な経験から感情を獲得していくという素晴らしい作品だったのだが、視聴中とにかくアナログハックがチラつき全く関係の無い文脈を獲得して毎話号泣してしまうというのがあり、未だに記憶に残っている。(アニメの話はまた別に記事を書こうと思うので割愛する。)

 

アリス・イン・カレイドスピア

 

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

アリス・イン・カレイドスピア 1 (星海社FICTIONS)

 

 前述のBEATLESS以後に読み、とてつもなく食らってしまった作品。

同作者が小説家になろうにて連載している幻想再帰のアリュージョニストにはイマイチ食指が伸びていなかったが、この作品はこれがもう尋常じゃなく面白く、あっという間に読み切ってしまった。

闇鍋のように色々な要素がグチャグチャにないまぜになった寓話そのもののような作品が寓話賛歌を描く7章が本当に凄く、何度読んでもめちゃくちゃに泣いてしまう。

この作品を読んでようやく確信したが、自分は「ヒトでないものが人間性を獲得したり、何かを創り出したり、何かを生み出す作品フェチ」のようだ。

余談だが星海社のサイト上にて無料であとがき以外を公開しているので気になった方は是非3章まで騙されたと思って読んで欲しい。

sai-zen-sen.jp

 

 深紅の碑文

 

深紅の碑文(上) (ハヤカワ文庫JA)

深紅の碑文(上) (ハヤカワ文庫JA)

 

 

深紅の碑文(下) (ハヤカワ文庫JA)

深紅の碑文(下) (ハヤカワ文庫JA)

 

上田早夕里による《オーシャンクロニクル》シリーズの2作目の長編。華竜の宮の続編にあたる作品である。

内容は重く、読むのに体力のいる小説だが、これまたとんでもなく面白く夢中になって前シリーズと合わせてあっという間に読み切ってしまった。

地球規模の環境変動が近い未来に起こり、世界の終末に向かいつつ生きていく人類達を描いた壮大なSFで、目に見える形でゼロサム・ゲームとなってしまった資源を奪い合う集団や、その集団と交渉を行う主人公、滅びゆく人類の文明を外宇宙へと飛ばし人類が生きた証を地球外に残そうと宇宙開発に奮闘する集団という、三者三様の人間模様を社会をまるごと描くことで書ききったすごい作品だった。

「物語が知性体を成長させていく」や、神林長平の言壺にも通ずる所のある「言語の不完全さ」というとにかくデカイ主題を見事に書ききった作品なのでまだ読んでいない人には是非読んで欲しい。(ネタバレになってしまうので詳細を書けないのが歯痒い)

 

個人的には一つ、まだ回収されていない設定もといチェーホフの銃があるので、このシリーズはまだ続くのでは無いかと思っている。

 

テスタメントシュピーゲル3 下

 冲方丁最後のライトノベルと称されたシュピーゲルシリーズの完結巻。

彼女たちがスタートラインに立つまでの道のりを丁寧に疾走感溢れる文体で描かれている。

テスタメント序盤の少女たち全員に艱難辛苦が降りかかり、この伏線は回収されるのか……と疑りながら読んでいた1,2巻からがらりと転換し、最近の冲方作品では珍しく後味のいい爽やかな読後感に包まれる作品だった。

MPBでは陽炎・サビーネ・クルツリンガーが、MSSでは雛・イングリッド・アデナウアーが好きである。

 

筺底のエルピス

 どこだったかのブログで絶賛されているのを見て読み始めた。

とにかく設定が緻密に練られており、作者自らがその設定を利用しつつ伏線を張っていく手腕は見事な小説だ。

一言で形容してしまうと異能力バトルライトノベルなのだが、その能力には厳格な原則が存在していて、その原則を見事に活かし相手や読者が予想できない形で裏切るところなどを読んでいてHUNTER×HUNTERの念能力に近いものがあると感じた。

一区切りが付く4巻から5巻の流れが本当に素晴らしく、5巻の最後の一文では見事に感嘆させられたので未読の方には是非騙されたと思って4巻まで読破してもらいたい。

 

 

バビロン 3 ―終―

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

 

 脚本を担当したアニメ、正解するカドが様々な賛否両論を巻き起こした野崎まどのバビロンシリーズの最新刊。

サブタイトルに―終―と付いているので終わるのかと思いきや全然そうじゃなかった。

1冊丸々を使って善悪の概念を定義するという今後の展開にも作用してくるであろう重要な巻だったが最悪の女曲世愛が登場して全てが”終わった”。

余談だが、 バビロン3が刊行される前に野崎まどが描いた色紙がこれである。

 

 読了後にこの色紙を見て、是非最悪の気分になってほしい。

 

正解するマド

正解するマド (ハヤカワ文庫JA)
 

 前述したアニメ正解するカドの公式スピンオフ作品。

野崎まどが脚本を手がけたTVアニメ『正解するカド』のノベライズを依頼された作家は、何を書けばいいのか悩むあまり精神を病みつつあった。次第にアニメに登場するキャラクター・ヤハクィザシュニナの幻覚まで見え始め……傑作SFアニメから生まれたもう一つの「正解」とは――衝撃のスピンアウトノベライズ

という頭のおかしいあらすじから判る通り大分に頭のおかしいメタ・フィクションSFになっている。

個人的にこの小説は野崎まどのファンが野崎まどと野崎まどの生み出したキャラクタに宛てて書いたラブレターと思っていて、恋愛モノの文法が多分に練り込まれているのがとても良かった。

電子書籍では一生発売されないと思うので是非フィジカルで購入して後半のあるページで椅子から転げ落ちる体験をしてみてほしい。

 

イリヤの空、UFOの夏 

中学生の時からずっと読もう読もうと思っていたが勇気が出ずにいよいよこんな年齢になるまで距離を取っていた名作ライトノベル

とにかく素晴らしい本を読んだ。中学生の時に読んでいたら頭がおかしくなっていたと思うのでこの年齢になってから読めて本当によかったと思った。

秋山瑞人の小説を初めて読んだがとにかく情景描写と文章の構成力が上手く、12月に読んでいたのに夏の匂いを感じ取れる程に世界に没入できた。

ぽっと出のキャラクタ一人ひとりまでもがこの世界に生きているというのをひしひしと感じられる文章力が本当に巧みで素晴らしいので、この作品の主人公である浅羽は描写されている文量ももちろん多く、とても魅力的なキャラクタとして生み出されている。

全4巻の構成もとにかく巧みで、1.2巻と3.4巻で2冊に分けそれぞれ世界を反転させているのもすごい。1巻で逃避の場所として描かれているトイレが3巻で覚悟の場所として描かれている事に気付いた時思わず大声を出した。

 

所謂セカイ系でカテゴライズされることの多い作品だが、その定義が主人公が世界とヒロインを天秤にかけて選択するということならば、イリヤの空、UFOの夏は二人ともが主人公で、二人ともが天秤を持っているというのが素晴らしいと思う。

二人の主人公の選択を4巻かけて丁寧に描いた作品であり、どちらかと言えば個人的にこれは恋愛小説の文法であると思っている。

秋山瑞人の作品は他に読んだことがないので、来年には最高峰のラノベとして名高いE.G.コンバットを読みたい。

 

おんなのこぱーてぃ

www.animate-onlineshop.jp

頭がおかしくなったと思われるかもしれないが大真面目である。

最後に少し毛色が違うがへんりいだ先生の成人向けコミックを紹介したい。

主にこの本を評価しているのは内容ではなくて(もちろん内容も素晴らしかったが)

とにかく装丁が良く本としての完成度が高い。

成人男性が大真面目に脳内で生み出した最高に可愛い女児のイメージが細部まで表現されており、パステルカラーな色使いやフォントに至るまでくらくらするほどのこだわり様だ。

一番凄いと思ったのがあとがきで、是非購入して実物を確認してほしいのだが、ファンシーないかにも女児が使いそうな便箋風のペーパーが付いている。このこだわりには正直なところ少し引いた。

昨今電子書籍が隆盛の時代だが、こういう装丁にこだわりがある本はフィジカルでの所持に意味が出てくるので個人的にはどんどんやってほしい。

 

最後に

 

2017年は昔から気になっていた作品を読む機会が多く、その全てがめちゃくちゃに面白い作品だったので来年も気になっている作品は絶対に読むように心がけたい。

貪るようにアニメと読書を続けた1年だったので、機会があれば今年見たよかったアニメに関しても記事を書きたいと思う。